「Tale:JAPARIコンソーシアム-開拓者-01」の版間の差分
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「次回から、ここに来る時は、我にも声をかけてくれ。」 | 「次回から、ここに来る時は、我にも声をかけてくれ。」 | ||
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2018年9月25日 (火) 14:28時点における最新版
「どすこいかわうそルームの裏に、何があるというのじゃ? それにお前が花束とは珍しいのう」
「そうだったな、ここをスザクに語ったことは今までなかったな…」
スザクの素朴な疑問に曖昧な解答をして、再び思慮の中に迷い込んだ。
(こんなことをした俺を…そしてそのことを今の今までひた隠しにしてきた俺を……スザクはどう思うだろう?)
後悔とはよく言ったものだ。というよく使われる言い回しを頭のなかでこねくり回しながら、答えなどわからない問いを考えていた。
(いつかは語らなければ、許しを請うことすらできないんだ。だから今、二人でここに足を運んでいるんだ。)
「カイ…?」
「あぁ、すまん。物思いに耽っていた…ここに何があるかだな。」
スザクの呼びかけで、思慮の中から引きずり出され、話そうと決意する。
「ここは…コンソーシアムの為に犠牲になった人々の、慰霊碑だ。」
「非公式の?」「あぁ」
「非公式の慰霊碑か…まったく見当がつかんのじゃ。」
「コンソーシアムの為に、コンソーシアムが生まれる前に犠牲になった人々の慰霊碑だ。」
「ほう…」
「Ωコーポレーションを成り立たせるための元本はどこから出てきたと思う?」
「資料じゃと…お前が全ての開始資金を出したとなっとるのじゃが…そこの出処の話なのじゃ?」
「俺は裕福な所の出身でも、商才があるわけでもなかった。だから、好き嫌いせずに金になる仕事をひたすら受けるしか無かった。」
「金になる仕事となると…命の危機が訪れるような仕事じゃな。大変だったろう?」
「大変なのは大変だったが…自分の命は正直どうでもよかった…というより死ねば終わりだ。だが引けなかった、だから考えないようにした…それより…」
当時の事を思い出す…静かな場所に佇む豪邸を爆薬で賑やかにし、慌てる警備員を一人ひとり確実に仕留め、邸内に侵入する。血まみれの夫、子供を抱え命乞いをする妻、泣いて逃れようとする子供…
足がかりになりかねない以上殺すしか無かった…そういう依頼だった…
「それより、罪のない人を…女子供も…依頼に含まれているなら容赦なく殺した…金のために。」
光景が次々とフラッシュバックしてくる
新鋭コーポレーションの記者会見場…酔いつぶれだらけの酒場…男女が乱れ、ドラッグの殻が散らばった寝室…高貴そうな老婆が水タバコを吸っているVIPルーム…
「……」
「時間が限られていた…そういう仕事をこなさなければ今のコンソーシアムが無かった事は明らかだ。」
「それでも…いくら純白の正義で塗り重ねようと…叱責の念が…死者の呪いのように…いつまでも俺から安息の夜を奪う。」
「だがコンソーシアムにこんな漆黒の経歴を突如として告知すれば…このコンソーシアムの幻想は崩れ去るだろう…」
「だから…」「だから…」
スザクが遮るように声を重ねる。
「己の心に、お前だけの漆黒の経歴として、この地に秘めていたと。」
「そうだな…」
これ以上語ることはない、後はスザクがどう感じるかだ。
「まったく、どうしようもない奴じゃの。」
次の言葉を待った。スザクはしばらくして、口を開いた。
「何年ともに戦ってきたと思っておるのじゃ」
「お前がどんな経歴だろうと、何年ひた隠しにしてこようと、この事実は揺るがない、そうじゃろ?」
言葉もなく、静かに頷く。
「我はそれだけで十分じゃ。」
声もなく、涙を流す。
今更になって、自分の愚かさが具現化してくる。
自分がなんと器の小さな人間だったか。
「我からのお願いは二つじゃ。」
「まず、その花束を分けてくれ、我もお供えをしておきたい。」
静かに、花束を分け、渡す。
「次に、」
一呼吸の沈黙があった。
「次回から、ここに来る時は、我にも声をかけてくれ。」